
写真に謎の縞模様が入ってしまう…



そんな経験はありませんか?
フリッカー現象は、人工の光がある場所で写真を撮る際に多くの人が直面する問題です。
特に最近のLED照明は、見た目では気づかないほど高速で点滅しているため、何も知らずに撮影すると縞模様の写真になってしまうことがあります。
この記事では、フリッカー現象が起こる原因から、誰でもすぐに実践できる具体的な対策方法まで、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。
・フリッカー現象とは何か?
・フリッカー現象が写真に与える影響
・フリッカー現象を回避するためのシャッタースピード設定方法
・カメラの「フリッカーレス機能」の活用方法
・実践で役立つ具体的な撮影例とアイテム
それでは、フリッカー現象の「なぜ?」を紐解き、美しい夜景写真を手に入れるための知識を身につけましょう。
そもそもフリッカー現象とは?


私たちの肉眼では、照明は常に明るく光っているように見えます。しかし、交流電流(AC)で点灯している人工灯は、実は非常に高速な速度で点滅を繰り返しています。この「点滅」がフリッカー現象の正体です。
日本では、電気の周波数が50Hz(東日本)と60Hz(西日本)に分かれています。この周波数によって、照明の点滅速度も異なります。
- 50Hz地域(東日本): 1秒間に100回点滅
- 60Hz地域(西日本): 1秒間に120回点滅
この高速な点滅の瞬間に、カメラのシャッターが偶然にも「光が消えている瞬間」を捉えてしまうことで、写真の一部が暗くなったり、縞模様になったりするのです。


フリッカー現象で起こる代表的な2つの問題
フリッカー現象が写真に与える影響は、主にシャッタースピードによって現れ方が変わります。
全体が暗く写る、明るさにムラが出る
シャッタースピードが非常に速い場合(例:1/500秒など)、シャッターを切るタイミングによっては、照明が消えている瞬間の光を捉えてしまい、写真全体が暗く写ってしまうことがあります。
特にスポーツ撮影などで、照明の真下で被写体が暗くなるのはこの現象の可能性が高いです。
写真に黒い縞模様(バンド)が入る
シャッタースピードが点滅周期と合わない中途半端な速さ(例:1/160秒など)の場合、写真に部分的な明るさのムラや、黒い縞模様が入ることがあります。
これは、センサーが光を取り込んでいる間に、照明が点滅を繰り返したために発生するものです。
フリッカー現象を回避するには、この「点滅」を意識したカメラ設定が必要不可欠なのです。
シャッタースピードでフリッカー現象を対策する
フリッカー現象を回避するための最も基本的で確実な方法は、「シャッタースピード」を調整することです。
シャッタースピード設定の基本ルール
日本国内で撮影する場合、以下のシャッタースピードを目安に設定しましょう。
- 東日本(50Hz地域):1/100秒より遅く
- 西日本(60Hz地域):1/120秒より遅く
このシャッタースピードに設定することで、カメラが光を取り込んでいる間に照明が「光っている瞬間」と「消えている瞬間」の両方を複数回捉えることができます。


その結果、センサー全体に平均的な明るさの光が届き、暗くなったり、縞模様が入ったりするのを防ぐことができるのです。
例えば、イルミネーション撮影では、シャッタースピードを1/80秒程度に設定するのがおすすめです。
この速さなら、50Hz地域でも60Hz地域でもフリッカーの影響を受けることなく、イルミネーションを明るく美しく写すことができます。
なぜシャッタースピードを遅くすると良いのか?
カメラはシャッターが開いている間、光をセンサーに記録し続けます。シャッタースピードが遅いほど、シャッターが開いている時間が長くなります。
例えば、1/500秒のシャッタースピードでは、シャッターが開いているのはたった0.002秒です。
このわずかな間に、照明がたまたま消えている瞬間が訪れると、写真が暗くなってしまいます。
しかし、1/80秒のシャッタースピードなら、シャッターは0.0125秒も開いています。この時間内に、照明は何度も点滅を繰り返すため、光っている瞬間を確実に捉えることができます。
手ブレに注意!三脚の活用が鍵
シャッタースピードを遅くするデメリットは、「手ブレ」が発生しやすくなることです。
特に、1/80秒というシャッタースピードは、手持ち撮影では手ブレのリスクが非常に高くなります。手ブレは写真全体がブレてしまい、せっかくフリッカーを回避できても、台無しになってしまう可能性があります。
フリッカー現象を完璧に回避し、かつ手ブレのないシャープな写真を撮るためには、三脚の使用を強くおすすめします。
三脚を使えば、シャッタースピードを1/60秒や1/30秒、さらには数秒といった長時間露光に設定することも可能です。
これにより、フリッカー現象の心配は皆無となり、光の軌跡を表現するといったさらにクリエイティブな表現も楽しめます。
カメラの「フリッカーレス機能」の活用
最近の多くのデジタル一眼カメラやミラーレスカメラには、「フリッカーレス機能(フリッカー抑制機能)」が搭載されています。
フリッカーレス機能の使い方
カメラのメニュー画面から、フリッカーレス機能を「ON」に設定するだけで、フリッカーを気にせず撮影に集中できます。


- 手動でシャッタースピードを調整する手間が省ける
- 高速シャッタースピードでもフリッカーを抑制できる
- 連続撮影時でもフリッカーによる明るさのムラを防げる
注意点:LED照明には効果が薄い場合も
ただし、このフリッカーレス機能は万能ではありません。
多くのカメラのフリッカーレス機能は、蛍光灯のように比較的ゆっくりした点滅周期の光源に対して高い効果を発揮します。
しかし、最近普及しているLED照明の中には、蛍光灯よりもはるかに速い周波数で点滅するものがあります。
この高速な点滅には、カメラのフリッカー検出機能が追いつかないことがあり、フリッカーレス機能をONにしていても、フリッカー現象が発生してしまうケースがあります。
そのため、LED光源を撮影する際は、フリッカーレス機能だけに頼るのではなく、手動でシャッタースピードを遅くするという基本的な対策も合わせて行うことが大切です。
- 室内(オフィス、学校など)の蛍光灯: フリッカーレス機能をONにして撮影
- LEDディスプレイ、LED電球、イルミネーション: シャッタースピードを1/80秒(または1/100秒/1/120秒より遅く)に設定して撮影
実践で差がつく!具体的な撮影例とアイテム
撮影例1:イルミネーション撮影
イルミネーションは、フリッカー現象が起こりやすい代表的な被写体です。
失敗例
- シャッタースピードをオートに任せて撮影すると、1/500秒など高速なシャッタースピードが選択されてしまい、一部の電球が暗く写る。
- 写真全体にムラができ、本来の華やかさが失われる。
成功例
- 撮影モードをシャッタースピード優先(S/Tv)またはマニュアル(M)に設定。
- シャッタースピードを1/80秒に設定。(三脚があれば1/60秒以下でもOK)
- ISO感度を調整して適切な明るさにする。
- 三脚を使用し、手ブレを防ぐ。
撮影例2:スポーツやライブ撮影
体育館やスタジアム、コンサートホールは、強い照明が使われているため、フリッカー現象が頻繁に起こります。
失敗例
- 高速なシャッタースピード(例:1/2000秒)で動きの速い選手を撮影すると、写真全体に黒い縞模様が入る。
- 特定の場所で撮影した写真だけ、被写体が暗く写ってしまう。
成功例
- カメラのフリッカーレス機能をONにする。
- フリッカーレス機能が追いつかない場合は、シャッタースピードを1/100秒(東日本)または1/120秒(西日本)に調整する。
- 動きを止めたい場合は、ISO感度を上げて露光量を確保する。
おすすめアイテム:クロスフィルター
フリッカー現象の対策とは少し異なりますが、イルミネーション撮影をより美しく演出したい方におすすめのアイテムがあります。
それは「クロスフィルター」です。


クロスフィルターは、点光源(イルミネーションの電球など)を、光がクロス状にキラキラと輝くように演出してくれる特殊なフィルターです。
このフィルターを使うことで、フリッカー現象を回避して明るく写した電球の光が、さらに印象的で幻想的な写真に仕上がります。
写真撮影は「光」をどう扱うかが重要です。
フリッカー現象を理解し、適切にシャッタースピードをコントロールすることで、あなたの撮影の幅は格段に広がります。
まとめ
今回の記事で解説したフリッカー現象とその対策について、最後にまとめておきましょう。
- フリッカー現象とは?
- 蛍光灯やLED照明の高速な点滅が、カメラのシャッタータイミングと合わないことで起こる写真の明るさのムラや縞模様。
- 最も確実な対策方法
- シャッタースピードを光源の点滅周期より遅く設定すること。
- 東日本(50Hz):1/100秒より遅く
- 西日本(60Hz):1/120秒より遅く
- イルミネーション撮影では1/80秒がおすすめ。
- カメラの便利機能
- 多くのカメラに搭載されている「フリッカーレス機能」を活用する。
- ただし、高速で点滅するLED照明には効果が薄い場合もあるため、手動設定も併用する。
- 実践のポイント
- シャッタースピードを遅くすることで手ブレが発生しやすくなるため、三脚の活用を検討する。
- RAWで撮影しておくと、フリッカーによる明るさの差を後から補正できる場合がある。
知識として知っていても、実際にカメラを触ってみないと感覚はつかめません。
ぜひ、ご自宅の照明や街中のネオンサインなどで、シャッタースピードを変えながらフリッカー現象の写り方の違いを試してみてください。
フリッカー現象の仕組みと対策方法を理解し、実践することで、これまで失敗に終わっていた多くの写真が、感動的な一枚へと変わります。ぜひ、この知識を活かして、あなたの写真撮影を楽しんでください。
そんじゃまた!


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