美しい風景を前にシャッターを切ったとき、広がる景色全体にピントが合っていると、写真の魅力はぐっと増します。

でも、どうすれば手前から奥まで全部くっきり写せるの?
そんな疑問に答えるのが、パンフォーカスという撮影テクニックです。
途中、複雑な計算式ができてきますが、無理だと感じた人はその部分を読み飛ばしてください。
その続きに計算しなくても簡単に撮る方法も紹介しています!


この記事では、風景写真家にとって必須の知識であるパンフォーカスについて、初心者の方でも理解できるように、基礎から丁寧に解説していきます。
・パンフォーカスとは何か
・パンフォーカスを簡単に実現する撮影方法
・より完璧なパンフォーカスを撮るための応用テクニック
それでは解説していきましょう。
パンフォーカスとは


パンフォーカス(Pan Focus)とは、写真の手前に写っている被写体から、遠くの背景まで、写真全体にピントが合っているように見える状態を指します。
ポートレートやマクロ撮影のように、被写体の一部を際立たせるために背景をぼかす「浅い被写界深度」の表現とは正反対の撮影方法です。
パンフォーカスは、雄大な山並み、広大な草原、街の夜景など、広がりを感じさせる風景写真で特に力を発揮します。
・パンフォーカスは、写真全体にピントが合っている状態。
・風景写真や広角撮影でよく使われる。
・背景をぼかす撮影方法の逆と考えるとわかりやすい。
パンフォーカスを成功させる3つの基本ステップ
「写真全体にピントを合わせる」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、基本的な原理はシンプルです。ボケを活かした写真を撮るときと逆のことをすれば、パンフォーカスに近づきます。
具体的には、以下の3つの要素を意識して撮影しましょう。
絞り(F値)は、写真に写るピントの合う範囲(被写界深度)に大きく影響します。
F値が小さい(F2.8など)と被写界深度は浅くなり、ボケやすくなります。
一方、F値を大きくする(F8、F11、F16など)と被写界深度は深くなり、ピントが合う範囲が広がります。
焦点距離が短い広角レンズ(例:24mm、16mm)は、望遠レンズに比べて被写界深度が深くなる特性があります。これにより、ピントが合う範囲が広がり、パンフォーカスを達成しやすくなります。



持ってるレンズのなるべく広角側で撮りましょう!
カメラから被写体までの距離も、被写界深度に影響します。
被写体に近づくほどピントの合う範囲は狭くなり、離れるほど広くなります。
風景写真では通常、被写体から距離があるため、この点は意識せずとも自然にクリアできることが多いです。
この3つを押さえるだけでも、手前から奥までピントが合った、シャープな風景写真を撮ることができます。
F値:F11~F16
レンズ:24mmや16mmなどの広角レンズ
構図:手前に岩や花などの被写体、奥に山や空を配置
より完璧なパンフォーカスへ:過焦点距離を理解する
上記の3つのステップで十分に満足できる写真が撮れるはずですが、「もっと完璧に、隅々までピントを合わせたい」という方もいるでしょう。
そこで知っておきたいのが、過焦点距離(Hyperfocal Distance)という概念です。
過焦点距離とは?
過焦点距離とは、無限遠(∞)までピントが合うようにするための、カメラから被写体までの最適なピント位置のことです。
この距離にピントを合わせると、ピントを合わせた位置の半分から無限遠まで、すべてがシャープに写ります。



「一番効率的に、手前から奥までピントを合わせられる距離」と考えてみてください


過焦点距離の計算方法
過焦点距離は、レンズの焦点距離とF値によって変化します。正確な距離を知るには、以下の計算式を使います。


ピントが合った点からわずかにずれてぼけた点を「錯乱円」と呼びます。この錯乱円が肉眼でぼけと認識されない範囲を許容錯乱円といい、フルサイズ機では0.03mmで計算するのが一般的です。
たとえば、焦点距離24mm、F11のレンズで撮影する場合、この式に当てはめると、過焦点距離は以下のように計算できます。


つまり、約1.75mの距離にピントを合わせれば、その半分の約0.875mから無限遠までピントが合うことになります。
過焦点距離の計算が面倒な人へ
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簡単に使えるので、計算が面倒な人におすすめです
計算不要!過焦点距離を感覚で掴む方法



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撮影現場でサッとピントを合わせたい!
そんな方には、計算をしなくても過焦点距離に近いピント位置を見つける方法があります。
手前の3分の1にピントを合わせる
被写界深度は、ピントを合わせた位置から手前に1/3、奥に2/3の割合で広がるという性質があります。


カメラのライブビュー画面を見て、手前の地面から奥の風景までの距離をざっくり3分割し、その最初の3分の1の位置にある岩や草などにピントを合わせるだけです。これだけで、感覚的にパンフォーカスを成功させることができます。
これはあくまでも概算ですが、ほとんどの風景撮影シーンで有効なテクニックです。
計算やアプリに頼らず、直感的に撮影できるので、ぜひ試してみてください。
- カメラを三脚に据え、構図を決める。
- 絞りをF8~F16に設定する。
- カメラのライブビュー画面で、手前から1/3の場所にある被写体にピントを合わせる。
- シャッターを切る。
それでも完璧なピントが合わないときは



上記の方法を試しても、どうしても隅々までピントが合わない場合があります
とくに、カメラから近い位置に大きな被写体がある場合や、F値をあまり絞りたくない場合に起こりがちです。
そんなときに活用したいのが、被写界深度合成(Focus Stacking)というテクニックです。
- 三脚にカメラを固定し、構図を決める
- 手前の被写体にピントを合わせて1枚撮影
- 中景の被写体にピントを合わせて1枚撮影
- 奥の被写体にピントを合わせて1枚撮影
- これらの写真をPCに取り込み、「Adobe Photoshop」などの現像ソフトで合成する
この方法は手間がかかりますが、手前から奥まで、ピントのずれがまったくない、完璧なパンフォーカス写真を作成できます。
風景写真家や、ブツ撮りを行うプロもよく利用する、高度なテクニックです。



最近のカメラには、被写界深度合成機能がついているものもあるので、お持ちのカメラに機能がないか確認してみましょう。
まとめ
- パンフォーカスは、写真全体にピントが合っている状態。
- 基本の3ステップは、「F値を絞る」「広角レンズを使う」「被写体から離れる」。
- より完璧を目指すなら、過焦点距離にピントを合わせる。
- 計算が面倒な場合は、手前の3分の1にピントを合わせる方法を試す。
- 最終手段として、被写界深度合成も有効。
これらの知識を駆使することで、あなたの風景写真は格段にレベルアップするはずです。
まずはF値をF11に設定し、手前の3分の1にピントを合わせて、壮大な風景を写真に収めてみましょう。
風景写真を撮りたい人にとっては、かなり重要な知識になりますので是非何度も読んで理解してください!
そんじゃまた!


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